【経営課題解決ワークショップ|Ascension事例】ヤマト醤油味噌「発酵食美人をコンセプトにした toC事業を加速せよ!」
古くから発酵食文化の歴史がある金沢市大野町で創業110年を超える「株式会社ヤマト醤油味噌」。コロナの影響を受け、新たな事業展開を迫られる2020年にworkitの課題解決型ワークショップ「Ascension」に参加いただきました。
ヤマト醤油味噌5代目の現営業部部長・山本耕平さんにお話を伺いました。
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林:まずヤマト醤油味噌さんの事業について教えていただけますか?
山本:ヤマト醤油味噌は「発酵食文化を通して、お客様の健康で喜びに満ちた食生活実現のお役に立ちます。」という経営理念を掲げ、具体的には、会社で醤油と味噌を作る人を育て、ヤマト醤油の食を通じてお客様の腸から整える『発酵食美人』を増やすことを目指しています。
商品としては、醤油や味噌に加え、玄米甘酒、糀のソースなど多様な商品開発を行い、製造・販売しています。
また、本社工場内では「ヤマト・糀パーク」という体験型の施設を運営しています。「ヤマト・糀パーク」内には、直売店のほか「発酵食美人食堂」「糀蔵」等の体験型施設があります。
私たちは、例えば、世の中に塩糀が知られる前から塩糀を活用した活動を行い、塩糀を使った料理教室や部活動など、モノづくりとしての商品の提供に加えて、体験価値の提供も行なってきました。
林:まさに発酵食文化の価値を現代に合わせてアップデートしながら、引き継いできている会社なのですね。まだまだ新しいことを仕掛けている最中という印象を受けますが、この先はどのような展望があるのでしょうか。
山本:この先10年の展望としては、発酵ツーリズム文化を創りたいと思っています。大野町全体で発酵にまつわる街づくりを推進し、ここに来ないと体験できない価値を生み出していきたいです。大野町が金沢の目的地の一つとして、「発酵を学ぶなら金沢大野」という認知を広めていきたいですね。
フィールドワークで顧客の声を聞き、本質的な課題を見つける
林:ありがとうございます。それではここからそんなヤマト醤油味噌さんがworkitに参加いただいた経緯からお伺いしていこうと思います。
ヤマト醤油味噌さんにはコロナ初期の2020年にworkitに参加していただきました。当時はどういった課題があったのでしょうか。
山本:当時私自身は卸売りの法人営業のマネージャーとWEBマーケティングの企画領域を担当していました。卸先の飲食店や販売店がコロナで軒並み営業できなくなる影響を受け、オンラインなどを活用して直接来店できなくても会社のことを知ってもらい、長く顧客になってもらうにはどうしたらいいか?、という課題に直面していました。
林:そこでワークショップのお題が「BtoBの売り上げがコロナの影響を受けたため、BtoC向けのWEBサイトを作りたい」ということだったのですね。
山本:はい。ただそこで驚いたのが、このワークショップの特徴と言えると思いますが、講師から参加者に対して「地方企業の課題を鵜呑みにしてはいけない。問いの立て方から疑おう。」というレクチャーがありました。
参加者は数社の大企業の方が3、4人のチームに分かれて2泊3日の中で「座学→ヒアリング・取材→提案」を行っていくのですが、特に現地調査の踏み込み度合いが違うと感じました。金沢駅の販売店の前でお客様にインタビューを行い、そこで男性と子供はお買い物をせずいらっしゃるということに気づいたということでした。今まで女性ばかりに注目していたのですが、同行している男性や子供が手持ち無沙汰にしているということに気づきがあったということでした。女性ばかりでなく、そこにいらっしゃる人を大事にする。むしろお買い求めにならないお客様にその理由を聞きに行くということを実施していました。
林:WEBサイトを作って欲しいというお題に囚われず、本質的な課題を探しに行ったということですね。
山本:そこから出てきた提案が、「子供が学べる食育ミュージアム」「オフィスグリコならぬオフィスヤマト」などでした。
経営者として、社外メンバーとのプロジェクトマネジメント経験を得る
林:ワークショップを通じて、山本さんご自身の気づきや学びはありましたか?
山本:私自身が自社以外で仕事した経験がほとんどない中で、社外のメンバーとの関わり方が大きな経験になりました。これからの時代、正社員だけでなく業務委託の方や副業、プロボノ含めて多様な人材との共創が重要になってくると感じていますが、それには受け入れ側の環境を整えることが必要です。
現在業務委託の方が1名いますが、この時の体験が役立っていると感じています。プロジェクトを複数同時に走らせていく中で、伴走者の受け入れ方を学びました。
地域の経営者はどうしても自身で仕事を抱え込んでしまい、本来注力すべきところになかなか力を割くことができないということに陥りがちですが、プロジェクトの完成度上げていくためにも、適切に人を配置して働きやすいように動いてもらう方法を学べたと思います。
林:workitのワークショップでもバックグラウンドが異なる人々が集まった複数のチームに対応していく必要があったと思うのですが、特に意識したことはありますか?
山本:3チームのマネジメント方法ですね。基本的にはポジティブフィードバックをしていたことや、必要な情報の渡し方、コミュニケーションの取り方がとても学びになりました。利害関係のない人にどう関わって動いてもらうか。最終的にみんながヤマト醤油のことを大好きになってくれたことで、心が繋がって一緒にやっていく醍醐味を感じました。
林:ありがとうございます。他のワークショップとの違いで感じたことはありますか?
山本:一番は自社を事例にしてもらえることですね。リアリティがあるので私自身も自分ごと化しやすい。
自社のケースは自分なりの見方だと見落とすことがあります。そういったことに参加者の新たな目線で示唆をいただけることはとても有り難かったです。
林:それでは最後に、今後このワークショップに参加する事業者の方へのメッセージをお願いします。
山本:地域の事業者は良くも悪くも地域密着型であることが多いですが、時代の変化が激しい中、新しい地域や新しい事業分野へ出て行かなければならないと考えている事業者さんは多いと思います。workitはそういった越境をしていくときに良いプログラムであると感じています。外からの視点や新しい角度からの分析により、今まで自社だけでは気づかなかった課題や、逆に強みの再発見にも繋がる可能性があるのではと思います。
林:今回のワークショップが今後のヤマト醤油味噌さんの発展に繋がっていければとても嬉しいです。本日はお忙しいなかありがとうございました!